研究紀要

平成27年度 研究紀要論文の募集を開始しました。

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原稿締め切り

1次締め切り  平成27年11月27日(金)

最終締め切り  平成28年 1月15日(金)

 

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平成24年度 日本初等理科教育研究会 研究紀要(NO.88)

 

1 生物分野における類・因果としての見方・考え方を養う理科学習    生命の連続性を意識させることに着目した事例的検討

千葉大学教育学部附属小学校 前川 良平

生命の連続性を意識した単元構成を設計した。その結果,モンシロチョウが生命をつなぐための巧みな生き方を繰り返し感じ取りながら,主体的に対象とかかわる姿が見られた。その繰り返しのなかで,他のチョウや成長段階と関係づけて類としてまとめたり,変化の様子を時系列で関係づけて因果としてまとめたりする児童の姿の一端を示すことができた。一方で,観点の変更を促すにはどのような手立てが有効なのか,また,関係づけがどのように児童のなかで行われているのか,実践を重ねながら明らかにしていく必要性を感じた。

 

2 学習の系統性を重視した「振り子の運動」の新展開         5年理科「ふりこのふしぎ」の実践を通して

富山県射水市立小杉小学校 高多 利明

富山大学 松本 謙一

条件制御の視点とともに、学習の系統性(エネルギーの見方)を重視した5年理科「振り子の運動」の学習展開を提案し、授業実践を行い、エネルギーの見方としての子どもの学びの妥当性と可能性について検証した。 振り子を往復運動の1つとして扱い、導入の授業でまずふれ幅を変えたコースター(同じ高さから転がす)と振り子を比較した。すると、最初に子どもは、周期が変わらない振り子を不思議に感じ、関心を高めた。その後、振り子についての追究をしていく中で、子どもは糸の長さを変えたときだけ振り子の周期が変わることに不思議の視点を変化させ、探究意欲を高めた。さらに、このことを解決していく中で、子どもはスタートするおもりの高さと周期の関係を因果関係としてとらえることができた。  このことから、コースターとの比較後に振り子を用いることで、測定の誤差の問題を解決できること、また、振り子を相関関係で捉えるのではなく、因果関係にまで踏み込み子どもが考えることができることが分かった。

 

3 友達のかかわり合いながら、探究心をもって主体的に問題解決する児童の育成    5年理科「電磁石の性質」の実践を通して

愛知県刈谷市立平成小学校 太田 いつか

本研究では、児童が探究心をもって主体的に問題解決ができるよう、教材・教具を工夫し、単元を貫く思いをもつ単元構想の工夫をするとともに、かかわり合いの場の設定をした。児童は単元を貫く思いをもち、問題を解決するために主体的に考えることができた。 そして、かかわり合いの場を適切に設定し、モデルや電子黒板のイメージ図を操作させて考えを伝え合わせたことで、児童は互いの考えを深め合い、自分たちの力で問題を解決することができたという達成感を感じることができた。

 

4 ルーブリックを用いた授業実践(その2)

第6学年「燃焼の仕組み」において

山口大学教育学部附属山口小学校 萱野  誠

山口大学教育学部理科教育講座  佐伯 英人

本研究では第6学年の「燃焼の仕組み」を対象として授業実践を行い、ルーブリックによる自己評価を分析し、考察した。その結果、得られた児童の学びの様態に関する知見は以下のとおりである。 3つの場面(予想する場面、結果を記録する場面、考察する場面)における各授業の自己評価の平均値は必ずしも高い得点とはいえなかった。 予想する場面の各授業間に有意な差がみられなかった。結果を記録する場面で授業④と授業⑤の間に有意な差がみられた。考察する場面で授業①と授業④、授業①と授業⑤の間にそれぞれ有意な差がみられた。 3つの場面において、目標とした到達度と単元終了時の自己評価の人数に有意な関連がみられた。 単元終了時の児童の自由記述から、授業後、振り返りカードを使って自己評価を繰り返すことの有効性が示された。また、児童の予想の根拠を示そうとする姿勢を伺い知ることができ、今後、向上していきたいという思いを見取ることもできた。

 

5 科学的な知をつくろうとする子どもが育つ理科学習指導のあり方をさぐる

佐賀県佐賀市立本庄小学校 松田 圭司

自然の事物・現象に対する漠然とした子どもの見方や考えを科学的な見方や考えへと高めていくためには、自分の考えを明瞭にして,自然の事物・現象に関わっていくことが肝要である。本実践では、自分の考えを明瞭にするために,予想を立てる場面で「考えのモデル」を示し,それに対する賛否を問うことにした。それにより,自身の生活経験や既習事項を手がかりに目の前の自然事象を考えられるようになり,新しい見方や考えをつくっていく子どもが育つのではないかと考え、実践に取り組んだ。  実践の結果,自分の感覚や直感を基にしたり,因果関係を概略的にとらえたりしていたが,生活経験・既習事項を基にそのしくみを詳細に考えながら,因果関係をとらえて結論を導き出し,自分の考えを更新しようとする子どもが育ってきた。

平成23年度 日本初等理科教育研究会 研究紀要(NO.87)

 

1 ルーブリックを用いた授業実践      第3学年「風の働き」において

山口大学教育学部附属山口小学校 吉田 哲朗

山口大学教育学部理科教育講座  佐伯 英人

第3学年「風の働き」において、児童にルーブリックを示して授業を行い、その効果を検証した。その結果、授業をすすめる間に徐々に自己評価の値が高まり、全体的にポジティブな方向へ変化することが示された。また、児童が自分自身の良さに気付くことが分かった。さらに、教員の児童へのかかわり方が影響を及ぼす場合があること、児童が自分自身を客観的に評価できることも示された。

 

2 イメージや感性を大切にし,科学的思考力を高める理科学習   4年理科「とじこめた空気と水をおしてみよう」の実践を通して

愛知県田原市立伊良湖小学校 上村 眞吾

子どもたちが、事物・現象に対してイメージしたことや、体感したことを表現する方法の一つとして『かく』活動がある。本研究での『かく』活動とは、絵や言葉、擬人化を使用しながら表現することとし、それを 使って科学的思考力を高めていこうと考えた。  中学年で育てたい科学的思考の一つである、「比較すること」を高めるために、体験活動や実験の活用、問題解決的な学習展開の工夫をするなどの手立てを講じた。そして、『かく活動』を行い、その考えを全体に広める場面を設定することで、子どもたちが科学的思考が高まった。

 

3 理解を深める教授法の研究     言語活動を重視した理科授業

埼玉県吉川市立栄小学校 矢野 聖也

児童一人ひとりの学習内容に対する理解を深めるための教授法をとして,4年「もののかさと温度」の授業の中で発表ボードを活用し,一人一人が自分の予想と観察・実験の結果の考察を発表ボードを活用して外化し,小グループで話し合う活動を取り入れた。発表ボードを活用することにより,互いの考えが本人や参加者の吟味の対象となる機会が増え,積極的な意見交換がなされて。特に,社会的相互作用の高い発話が多くみられたことが,児童の理解を深める要因となった。  授業前後の児童の概念調査及び自分の考えに対する確信度調査を行った結果,授業前に児童が保持していた素朴概念を,科学的な概念に概念転換することができた。また,確信度調査の結果,科学的な概念を自信をもって保持している児童の割合が大幅に増加していることやその割合が2ヶ月後の調査でもほとんど変わっていないことから,予想と観察・実験の結果の考察を発表ボードを活用して外化し,小グループで話し合う活動が,学習内容に対する理解を深める効果があることが明らかとなった。

 

4 B区分第5学年理科「流水の働き」の現地学習プログラムの提案     日本の川の特徴:平野には『堤防があること』に着眼して

富山県黒部市立中央小学校 稲田 真弓

富山大学 松本 謙一

日本では多くの川では、平野を流れるときに両岸に堤防が作られている。このため、流水実験と異なり、堤防がある実際の川、特に扇状地周辺においては、川底が周辺の平野より高い位置にある、いわゆる「天井川」の様相を示す場合もしばしば見られる。このことに着眼して、川の観察を中心に据えた現地学習プログラムを作成し、現地学習を通して子どもが問題解決できることを、授業実践を通して検証した。  その結果、現地学習を問題解決の中核に位置づけることで実感を伴った理解が得られることが認められた。そして、そこでは「観察してきた事実」「時間的スケール」「空間的(地理的)スケール」の3つの視点から、子どもは総合的に考察を深めた。

 

5 科学的な思考力を育てる理科学習   「考え変容ボード」を活用した対話を通して

愛知県名古屋市立名北小学校 稲垣 貴子

科学的な思考力を育てるために、実験前と後に、対話の相手を選ぶ「考え変容ボード」とイメージ図を用い、考えの質を高める対話のルールを取り入れて対話を行った。このことにより、本研究で得られた成果は以下の2点である。 ① 実験前の対話では、「考え変容ボード」で対話の相手を選び、例えを用いてイメージ図を説明するような対話を行わせることで、自分の考えに対する確かな説明ができるようになった。 ② 実験後の対話では、「考え変容ボード」で対話の相手を選び、実験結果とイメージ図が一致するような対話をさせたことにより、科学的な概念や言葉を用いて説明できるようになった。

 

6 科学的な思考力・表現力の育成を目指した理科学習指導の在り方     言語活動と体験活動の充実を通して

佐賀県有田町立曲川小学校 山下 仁士

現在の理科教育には科学的な思考力・表現力の育成が求められており,その手立てとして言語活動と体験活動の充実が注目されている。そこで,言語活動では,①自らの考えを整理し,より確かなものにする。②目的意識をもって学習に取り組む。③表現力を高める。体験活動では,①学習への意欲を高める。②主体的に学習に取り組ませる。③知識を活用して考える力を育てる。ということをねらい,これらの活動の充実が,科学的な思考力・表現力の育成につながると考え,授業実践を行った。  実践の結果,児童は目的意識をしっかりともって,意欲的に学習に取り組むとともに,考察の記述内容の向上が見られた。また,理科学習を生活と関連付けて考えることのできる児童が増えてきた。  これらのことから,今回の実践が科学的な思考力・表現力の向上や実感を伴った理解へとつなげることができたと考える。

平成22年度 日本初等理科教育研究会 研究紀要(NO.86)

1 幼児の興味・関心・意欲に基づき、目的意識を育てる総合的な指導のあり方
~オタマジャクシの飼育を通して~
習志野市立袖ヶ浦西幼稚園  井出 真紀子

幼稚園での教育は、教育要領に示されているように、自己を十分に発揮し、自発的・主体的であることが基本とされている。幼稚園で展開される活動は、幼児にとっての遊びである。“遊び”は、教育要領の5領域からなる指導計画に基づいた、教師の意図的・計画的な展開がある。教師に要求されるのは、活動のねらいを達成するための活動構成と5領域に結びつけながら保育を展開する指導力であると考える。
 そこで、5領域の中でも重点が置かれている『人間関係』と『環境』に着目して、オタマジャクシの飼育に取り組んだ。5歳児の育ちを踏まえ、先行経験から予測をしたり、気付いたことから考察をしたりできるよう援助を工夫した。幼児の意欲を引き出し、目的意識を育てることで、観察や考察は深まりと広がりを見せた。活動を通して分かったのは、稼動展開の中で教師からの提示と幼児からの気付きを連動させる大切さと、人とのかかわりが学びへの大きな原動力になることであった。

2 生活科における無作為なグループ構成による学習展開
―第2学年生活科「みんなでのろう ○○号」の実践から―
富山市立老田小学校    松永 望
富山大学人間発達科学部  松本 謙一

第2学年生活科「みんなでのろう ○○号」において、5人グループではあるが、グループの構成は、教師の意図や子どもの願いにとらわれないよう、「くじ引き」を用いて行った。その結果、不均質なグループが生じたが、グループ間のかかわりやグループ内のかかわりの状況から、不均質ならではの学びの姿を見出すことができた。究極的な目標『自立への基礎』へ直結する学習の場として、無作為なグループ構成による学習は効果的であると考えることができる。

3 対象への積極的な働きかけを促す単元展開の工夫とその効果
 -第2学年生活科「ハム☆スターほいくえん」の実践から-
上市町立相ノ木小学校 米井 和代
富山大学       松本 謙一

 生活科の内容(7)において、生命の大切さを子どもに実感させる上で、恒温動物の飼育は効果的である。しかし、継続的な飼育活動を展開している事例は少なく、たとえ継続的な飼育活動を行っていても、維持的な活動が大部分を占め、子どもの思いや願いを大切にした、積極的に対象に働きかける活動はあまり見られない。
 ここでは、継続的にハムスターを飼育する中で、まず母ハムスターに計画出産させる。そして子ハムスターとの出会いを契機に、小単元名「ハム☆スターほいくえん」を提示し、子どもたちが保育士となって積極的に子ハムスターにかかわる学習を展開した。
 その結果、「ほいくえん」という子どものくらしと直結した単元名を提示し、子どもの思いや願いを重視した展開をすることで、維持的な活動にとどまらず、積極的かつ創造的な活動に取り組み、実感の伴った気付きを数多く得ることができ,充実した活動となることを見いだすことができた。
今後、命を扱う上で何を子どもに約束事として示し、何を子どもの意思・判断にゆだねるかを明確にする必要がある。

4 児童一人ひとりが見通しを持ち、主体的に追究する授業
福島市立笹谷小学校  村上 宏

 本研究では、児童一人一人が自分の考えを明確に持つことができるようにするために、事象提示の役割を明確にするとともに、様々な場面において自分の考えを明確にしたり補ったり修正したりする場を設定し、主体的に自分の考えを表現できるような指導のあり方を4学年の複数単元において実践した。これまでの既習経験から説明できる部分と説明できない部分を持ち合わせ、知的好奇心を喚起するような事象を提示していくことで、課題を明確に持たせることができた。また、自分の考えを明確にしたり補ったり修正したりする場を設定することで児童が明確に自分の考えを示したり、友だちの意見から考え直す姿が多く見られた。

5 「科学的な思考力・表現力の育成」につながる「読解」を意識した理科学習
  -児童の概念をより科学的にする交流活動を通して-
佐賀市立鍋島小学校  松尾 天

 初等理科教育における昨今の課題点「科学的な思考力・表現力の育成」の一要因として,児童が学習の導入における目の前の事象を自らの概念(既有の学習や生活経験による)と関連付けて捉え(読み取る)られず,結果的に以後の学習の目的が薄れていることに帰着した。
 そこで,児童が学習の中で事象と出会う段階における,自らの概念との関連付けの必要性を考え,それを具現化する手段として「交流活動」を設定した。それにより,児童相互で共有した既有の学習や経験(経験の客観化)によって個々の概念をより科学的にしながら事象を捉える(読み取る)ことができた。それにより,児童が事象から見いだした問題に対して「仮説」をより科学的に表現するとともに,引いては,「実験結果」と関係づけながら「結論」を表現することにつながってきた。

6 運勢ライン法を用いた授業分析手法の有効性
―公立小学校の授業実践を対象としてー
山口大学教育学部理科教育講座 佐伯 英人
神戸市立五位の池小学校    藤村 俊也

「運勢ライン法に分散分析を組み合わせて用いる授業分析手法」を使って公立小学校の実践を分析・分類した結果、調査場面ごとの状況を、また、場面間の状況を詳細に見取り、検討することができた。本手法を用いて明らかになったことは次の2つである。
① 場面1、場面2、場面3、場面4は1つの考えに支持が集中していない状況であった。しかし、場面5で1つの考えに支持が集中した。
② 児童の支持率を変化させるのに効果があった活動が2つあった。1つは場面1と場面2の間の活動(実験)、もう1つは場面4と場面5の間の活動(学級全体での話し合い)であった。

7 発展課題を取り入れた学習が児童の水溶液の概念形成に及ぼす影響に関する研究
~第5学年「物の溶け方」における水溶液の判別学習~
埼玉県深谷市立深谷小学校  淺野貴之

 小学校学習指導要領における水溶液の学習では,水溶液の概念について質量保存とその透明性については触れられているものの,均一性の学習については中学校での学習内容とされている。そのため,小学校段階においては水溶液の概念が曖昧になっており,水溶液とそうでない物の区別をさせることが難しい。そこで本研究では,児童に水溶液の概念をしっかりと形成させるため,水溶液と水溶液ではない物の判別をさせる取り組みを授業の中に取り入れた。この取り組みでは,ただ水溶液を判別するだけでなく,水溶液を1週間置いておき,その様子を観察・記録させた。その結果,単元終了直後の調査及び3ヶ月後調査において,児童の水溶液についての概念形成に明らかな差が生じることが確かめられた。

8 エネルギーの変換や効率的な利用について考えることができる教具の開発とその有効性
-第6学年「電気の利用」において-
岩国市立灘小学校  錦生 正幸
山口大学教育学部理科教育講座 佐伯 英人

本研究では、エネルギーの変換や効率的な利用について考えることができる新しい教具を開発した。開発した教具の素材研究を行い、また、実践を通して教具の有効性を検証した。その結果、次の①~⑦のことが明らかになった。なお、①~③は素材研究の結果、④~⑦は教具の有効性の検証結果である。
① 3つの定格(①:2.5V-0.5A,②:3.8V-0.5A,③:4.8V-0.5A)の豆電球のうち、いずれの豆電球であってもプロペラが動くことが分かった。
② 8枚型のプロペラの回転の状態が最も良好であった。
③ 整流殻(チャンバー)の材質は、ガラス、ポリエチレンテレフタレ-ト(PET)のいずれの場合もプロペラが動くことが分かった。
④ 児童に豆電球が点灯するとプロペラが回る理由を考えさせ、イメージ図を用いて表現させることで、エネルギー変換に関する児童の考えの異同を明らかにできることが分かった。
⑤ 児童は外筒(シェル)内の空気の温度の違いなどを手掛かりに、豆電球が点灯すると熱が出るが、発光ダイオード(LED)が点灯してもほとんど熱が出ないと考え、さらに、空気の動きの有無とプロペラの回転の有無を関連付けて推論できることが分かった。
⑥ 自分たちがつくり出した電気の場合、プロペラが回ることを喜びとして感じ取ることが分かり、電気をつくる活動の意義が情意面から示された。
⑦ 手回し発電機をかなり回さないとプロペラが回り始めないという児童の体験から、エネルギーの変換ロス(損失)を体感できる教具であることが分かった。

平成21年度 日本初等理科教育研究会 研究紀要(NO.85)

1 子どもの理解を助け意欲化を図る理科学習における評価の工夫と授業改善
~PDSAサイクルを生かした小学校3年生「明かりをつけよう」の授業実践を通して~
今治市立国分小学校 松下 準市

本研究は、ノートや小テスト(アドバイス・カード)、心のアンケート(自己評価)を活用することが、子どもの理解度や意欲向上及び教師の授業改善にどのように役立つか検討した。
その結果、1)PDSAサイクルに、子ども同士による「学び合い」や「家庭学習」を取り入れると、学習への理解度が高まり、意欲向上がみられた。2)学習への理解や学習意欲に問題が見られる子どもの原因を、ノートやアドバイス・カード等で把握し、次時の授業において具体的な指導を行うことで、理解度や意欲に改善がみられた。3)ノートやアドバイス・カード及び心のアンケート等によって得られた手がかりにより、さらに授業改善の視点が明らかになった。4)授業後に評価内容を教師が分析する時間は、1単位の授業時間とほぼ同じであった。授業内容に応じて評価方法を選択すれば、日常の授業で活用できることが明らかになった。
これらの成果は、今後の理科学習の授業改善に活用可能であることが示唆された。

2 仲間理解を核にして考察を楽しむ理科学習の展開
-小3理科 「発見!じしゃくのふしぎ」の分析から-
上市町立上市中央小学校 中口 広乃
富 山 大 学       松本 謙一
射水市立歌の森小学校  佐藤 静香

 小学校の理科の学習では、科学的な見方や考え方を深めることが求められている。能力を培う一つの方法として、実験後の追究を楽しめるように学習を展開していく方法が考えられる。そこで、その糸口を「仲間理解」に求め、授業実践を通してその効果を分析・検討した。
 その結果、まず事物・現象とじっくりかかわらせることで、自分なりの考察から結論を出すことによって仲間の考えを聞きたいという意欲を高める。次に結論を紹介し合う場面を設定し、「友達はどんな事実から自分の考えをつくったのだろうか」といった投げかけから、仲間の考察の仕方を理解し合うことを楽しむ活動を繰り返すことで、児童が科学的な見方や考え方を深めていく姿を見いだすことができた。

3 物質に対する見方や考え方を活用する力を育てる理科学習
―3年「光」「電気」「磁石」の実践を通して―
島根県安来市立布部小学校  高橋 隆子

 本研究では,「物質に対する見方や考え方」の形成を3年理科「光」「電気」「磁石」の3つの単元で横断的に行うことを構想・実践した上で,それを活用する力の育成をねらって導入された特設時間の効果を分析した。その結果,「変容を促すねらいに基づく学びのデザイン」,「個別追究や話し合いの場の設定」,「生活と橋渡しさせた半知半解レベルの活用場面の導入」が有効であると示唆された。

4 命の素晴らしさを実感させる授業デザイン
ー小4「人の体のつくりと運動」の実践研究からー
みどり市立笠懸小学校 岩田 眞樹子

 本実践では、命の素晴らしさを実感させるために、骨の形や筋肉のつく位置などには意味があり、からだの動きや生活のしかたと密接な関係があることを実体験と結びつけて、確実に習得させることをめざした。また、「つくりと動き」や「人と他の動物」との関係を見いだす力を育成するため、モデルを用いた考える活動を取り入れた。事前と事後に同一の調査問題に解答させ、科学的概念の習得状況と感想の分析をした結果、実体験をともなった科学的概念の確実な習得が、命の素晴らしさの実感を生むだけでなく、もっと知りたいという意欲も喚起することが示唆された。さらに、指導方法の特徴を再検討した結果、帰納的な課題解決によって得られた結論が、次時以降の実験や観察の先行オーガナイザーとして働き、単元を通して相補的に働きあって、児童の概念を形成し、感動を生み、命の素晴らしさの実感へとつなげていることがわかった。

5 児童の思考を大切にした授業実践
―第5学年「流れる水のはたらき」においてー
周南市立秋月小学校      山根 雅章
山口大学大学院教育学研究科  潮田 篤 
山口大学大学院教育学研究科  飯田 暁 
山口大学教育学部理科教育講座 佐伯 英人

第5学年の理科で「流れる水のはたらき」を学習する。山口大学教育学部附属光小学校では児童の思考を大切にした授業実践を行っている。この授業実践を通して、児童の意識がどのように変容するのかについて研究した結果、「自然事象に対する理解」では男子にも女子にも教育効果がみられた。この理由として、児童の思考に沿った学習活動が丁寧になされたため、児童が見通しをもって活動できたことがあげられる。また、児童が自然の中で起こっている現象を想像し、イメージをもって学習したことがあげられる。一方、「学習に対する意欲」については実践の前後において明瞭な違いがみられなかった。この理由として、単元の実施期間中に冬季休業があり、学習意欲の継続がなされにくかったこと、また、児童の問題意識の醸成が十分でなかったことがあげられる。

6 科学的な見方・考え方育成のため、思考の場と言語活動を工夫した理科学習指導
―観察・実験の2ステップ化や論理的なノートづくりの工夫を通して―
福岡県筑後市立古島小学校     椎窓 敏広

 小学校理科の目標は科学的な見方・考え方の育成であり、これから重要視されているのは「体験の一層重視」と「言語活動の充実」である。本研究では、それを「思考の場と言語活動の工夫」として位置付けた。具体的には観察・実験の2ステップ化と論理的なノートづくりである。実践から次のような成果と課題が見られた。
○科学的な見方・考え方を3つの要素として捉え、その力の変化が見られた。
○観察・実験を2ステップ化させることで、学習対象である自然事象への概念形成や認識を深めることができた。
○論理的なノートをつくることで、テストや描画する際に実験した内容や身につけた科学用語を活用し、文脈は論理的になった。
○自然を愛する子どもが多く、その美しさや不思議さに魅了されている子どもが多い。理科学習においては観察や実験といった活動自体を好意的に感じている子どもが多いということが分かった。

7 学ぶ価値を実感する子どもの育成
第6学年「がんばってるぞ、ぼく・わたしのからだ」
-マラソンで一番活躍するのはどの部分?- の実践を通して
愛知県知立市立知立南小学校  村山 由久

 本研究は、子どもたちに身近な自然事象として自分の体に目を向けさせ、学習する実践である。子どもたちが主体的に学び、友達との関わりなどから「わかる喜び」や「仲間と認め合いながら学び合えた喜び」を実感することが学び価値を実感することであり、学びを深めていくためにはとても大切なことであると考える。具体的には、子どもの考えに沿った単元を構築し、ランキング形式の話し合いや毎回の授業後にシェアリングを設定した。
 その結果、マラソンをするときに一番活躍するのは体のどの部分かを意欲的に追究し、学びを深めることができた。それに加え、仲間との関わりを通して、疑問が解決したり、自分のことを認められたりする経験を重ね、学ぶ喜びを実感できた。

8 児童が見通しをもって観察、実験を行うことにより、問題解決の能力を育成する理科教育の研究
~動物に食べられる植物の学習を通して~
北九州市立大谷小学校   秋重 吉克

 問題解決の能力の育成では、自然事象に興味・関心をもち、そこから問題を見いだし、解決する方法を考え、観察、実験などを実行して、解決過程や結果について相互に話し合う過程が重要であると考えられる。
本研究では、これらの課題に対する手立てとして、児童が興味・関心をもてるような自然事象の提示をし、そこから児童が問題を見出すための工夫(手立て1)と、児童が解決するための実験方法を自ら考えることができるように支援すること(手立て2)を行い問題解決能力の育成を目指した。
これらの手立てにより、児童は事象を見て「どうなっているのだろう」「知りたい」と問題を見いだし、それを解決する方法を考え観察、実験を実行することができた。また、実験方法の過程や結果について話し合うことやまとめることによって考えを深めることができた。

平成20年度 日本初等理科教育研究会 研究紀要(NO.84)

1.モンシロチョウを教材とした実践が児童の意識・行為に及ぼす影響
―第3学年「こん虫をそだてよう」において―

山口大学教育学部理科教育講座  佐 伯 英 人
山口大学教育学部附属山口小学校 森 田 和 則

第3学年の理科で「こん虫をそだてよう」を学習する。本研究ではモンシロチョウを教材とした実践が児童の意識・行為にどのような影響を及ぼすのかを検討した。研究の視点は、児童の意識の変化、学級の違いと性の違い、飼育個体の死亡経験とした。
調査対象を第3学年の児童75名とし、調査方法には質問紙法を用いた。分析方法には因子分析、t検定、分散分析、χ2(カイ2乗)検定を用いた。その結果、次の①~③のことが明らかになった。
 ①本実践を通してモンシロチョウとチョウに対する「好き」という意識が高まった。
 ②「飼育中の意識・行為」に及ぼす影響は、学級の違いよりも、性の違いの方が大きかった。また、「飼育中の意識・行為」の得点は、女子の方が男子の得点よりも高かった。
 ③飼育個体の死亡経験と「飼育中の意識・行為」の間に関連性がみられた。

2.自然に親しみ,自ら論理をつくる子供の育成
第4学年『人の体のつくりと運動』(新単元)の実践を通して

北海道旭川市立愛宕東小学校  成 田  恵

 子ども自身が,知を更新させながら論理をつくり,つくり上げた論理と自然の事物・現象とを関係付けて納得することができたならば,自然の事物・現象に自ら目を向け,追究し続ける子どもを育成することができるはずである。
 そこで,『自ら論理をつくる』ことをキーワードに,研究を進めた。まず,意識のズレに気付く事象との出会いの工夫をした。また,仮説づくりから実験・観察を行い,結果から考察までの過程において,子ども同士の対話を重視し,自分なりの確かな結論づくりの場面を位置付ける工夫をした。その取り組みの結果,問題意識が醸成され,体験をもとに理解を深め,自ら論理をつくりながら知の更新を図ることができた。以下,その具体的な実践を記述する。

3.生物の営みを主体的に観察し,自然に対する思いや考えを深める子供の育成
~地域の自然事象を教材化し,総合的な学習と関連付けた理科指導
4年『ツバメを観察して小豆坂の自然を知ろう』の実践より~

愛知県岡崎市立小豆坂小学校 池田 芳浩

 本研究は,身近に存在する地域の自然事象を教材化し,体験活動を伴う学習を構築することで,子供たちの学ぶ意欲を高めようとした実践である。自然を愛する心情や問題解決能力,自然に対する見方や考え方を育成する理科指導について検証を加えた。懸命に生き抜く生物の姿や営みを実感することで観察する力を高め,ポートフォリオを継続することによって個々の学びの変容を把握し,教師が支援することで子供たちの
自然に対する思いや考えを深めることができた。

4.再考:子どもの「問題解決」を重視した授業
-第4学年理科「空気中の水」の実践から-
                      
富山県総合教育センター 荒田 修一 
富山大学        松本 謙一

 平成20年3月の新学習指導要領の公示に伴い、ますます確かな学力の育成が重視されてきている。それに伴い、教育課程部会審議経過報告を受けて、学習のスタイルを「習得・活用・探究型」に分類した様々な学習指導法が提案されてきている。しかし、この考え方は、学力主体で、学習する子ども主体ではないことに疑問を感じた。そこで、第4学年理科「空気中の水」における3名の子どもの姿の考察を通して、これまで初等理科教育研究会が推進してきている問題解決型の理科学習について、再考察を行った。
 その結果、従来から推進してきている問題解決型の授業は、子どもにとっては「探究型」、教師にとっては「習得型」であること、さらに、「活用型」に関しては、「習ったこと」を活かすという意味合いではなく「これまでの全生活経験・生活感情」を転移して持ち込むという意味で意味をもち、理科で願う子ども像に直結した学習指導法であることが確認できた。

5.他の実験班の情報を活用する追究活動
-CSCLシステムを利用した班別実験での停滞状況を打開した事例の分析から-

新潟大学教育学部附属長岡小学校 平澤 林太郎
理科における班別実験では,他の実験班の情報は実験前後の全体交流の場でしか把握できないことが多く,実験中に他の実験班の情報を活用して追究活動を展開することは少ない。
 本研究は,5年「もののとけかた」においてCSCL(Computer Supported Collaborative Learning;「コンピュータによる共同学習支援」)のシステムであるKneading Boardを班別実験活動に導入し,実験中に他の実験班の情報を容易に把握できるようにした。
  Kneading Boardを利用することで,停滞状況を打開するために他の実験班の情報収集が容易になり,学習者はその情報を実験班内で共有し,利用することができ,高次の学びを実現できた。また実験後の全体交流でも,各実験班の足跡を振り返ることができ,追究過程の整理も可能なため,学習者の知識・技能の習得や次への追究活動のために有効であった。

6.学びが生活に生きてくる理科を求めて

福島大学附属小学校 遠藤 謙一

理科の授業を通して今まで何気なく,あることが普通であった自然の事物・現象が何か特別なものとして見え,生活を見つめ直すことができるような「学びが生活に生きてくる理科」を求めてきた。そのために必要な視点を基に検証授業を行った結果,以下のような成果がみられた。
・日常生活とのつながりを考慮した教材は,身近な生活を見つめ直す視点を広げる。
・「問い」は子ども自身のものである。それは,子ども自ら動き出すためのきっかけや原 動力になる。
・話し合い活動の充実は,学級全体の問題の共有,そして子ども一人ひとりの,自然の事 物・現象への価値観の高まりにつながる。
・子ども自身による,自分の変容の自覚は,さらなる追究に向かう。

7.子どもが意欲的に学び、科学的な見方や考え方を育み、理解を深める理科学習の在り方
 ~5年 「てことつり合い」の実践を通して~

北九州市立松ヶ江北小学校 冨田 基史

子どもの実態に応じ、子どもの思考の流れを考慮した学習展開や教材の工夫をしたり、新たな発見ができる場を設定したりすることで、子どもたちは意欲的に学習に取り組み、基礎的・基本的な力を身に付け、さらに喜びを感じながら学習に取り組んでいくのではないか。この仮説の元に授業を展開した。子ども達はてこの3つの条件を制御して実験し、基礎的・基本的な力を身に付けることができた。実用てこから実験用てこに学習が変わっていく時には、てこの棒の重さについても考え、実験用てこの必要性を高めて学習に臨んだ。また、実験用てこの目盛りと目盛りの間でも、てこの釣り合いのきまりが成り立っていることを学び、つり合いのきまりの細やかさに触れ、喜びを味わうことができた。
 課題として、子ども同士が学び合う中で学習を深めていくことについては、不十分であったと考える。

平成19年度 日本初等理科教育研究会 研究紀要(NO.83)

1.「おや」「なぜ」を大切に、変化と要因に着目し追究することを通して、
 児童の意欲を高める第4学年理科学習指導

北九州市立黒崎中央小学校 吉竹 敦

本学級では、自然現象や事象に、「おや」「なぜ」と不思議に思うことが少なく、実験をしても問題の追及や考える楽しさより、実験をする楽しさを優先し、実験が自分の考えを証明するものとなっていなかった。
 1.「おや」「なぜ」という声が聞かれる出会いの工夫をする。
 2.変化と要因をふまえてまとめる工夫をする。
の2つの手立てを取って研究を行った。
 2つの手立てを取ったことで、考えることや実験の大切さを知って、以前より理科や実験が好きになった児童がたくさん増えた。
  今後は、視覚的に分かりやすい実験を通して、「おや」「なぜ」を大切にし、児童が考える楽しさや面白さを味わえる理科学習が出来るように研究を深めていきたい。

2.心の動きを伴う問題解決を充実させる学習の展開」
 ~水の姿の変わり方を四季の変化と関わらせて~

北海道教育大学附属旭川小学校 五十嵐 徹

今日の理科が抱えている問題点としては,自然とのかかわりが少ない子どもが増えてきていることである。実験や観察は好むが,自然と触れ合うのはすきではないといった子どもが問題視されている。また,学校で学習したことを活用して,生活で役立てたり,自然の事物・現象を見直したりする力を身に付けることが大切である。
そこで,自然界を意識して学習を進める子どもを育てることをねらって,四季を通して自然に飛び込み,状態変化をじっくりと観察する活動と自然の事物・現象を切り取ってきた実験を効果的に位置付ける単元構成を工夫した。さらに,自然事象を科学的に読み解く力を養うために,学習の連続性をもたせる重要な実験やそのポイントを吟味した。また,空気中には水蒸気という姿で水が存在するという概念形成とその証明のために,実験方法を子どもたちが考えた。その際に,どのようにアプローチしていくことで子どもが実験の方法を考え,見通しをもって解決していくことができるかを重視して実践を行った。

3.時間枠としての存在の意義を生かす「全体による話し合い」
 ー第4学年総合「おおしま ふるさとのえほん2006」の実践からー

射水市立大島小学校  北川 由美
富 山 大 学    松本 謙一

 総合的な学習の時間が,教育課程に「時間枠」として位置付けられた。その意義を生かして「問題解決」と「生き方」の2つのねらいに迫るために,「全体による話し合い」に着眼し,授業実践からその効果を検証した。
 その結果,活動・体験を中核に据えた「総合」の展開において,「同じテーマに対する多様な捉え方」と「追究している仲間の内面」についての話し合いにしぼり必要最低限設定することにが,子どもの追究を高め,ねらいに迫る上で効果的であることが,子どもの姿から裏付けられた。
 この2つの「全体による話し合い」は,方向目標としてのねらいや追究の有様が個性的であり,全体としてすべて多様であるという「総合」の特徴から見ても合理的であり,創造性の育成の糸口になると考えられる。

4.自然事象から問題を見いだし、意欲的に問題解決する子の育成
 ~6年 理科「ものの燃え方」の実践を通して~

刈谷市立双葉小学校  近藤 典子

 本研究では、単元を通して、まきのミニチュアにもなり、子どもたちの身近にあることで予想のしやすいわりばしを使って実践を行った。導入では、3つの実験をじっくり見ることで、飯ごう炊さんでの経験などを生かして、缶の中で割りばしをもっと燃やせそうだと見通しをもち、問題を見いだすことができた。さらに、自分で考えたことを自分の手で確かめる時間と道具を確保することで、意欲的に実験に取り組むことができた。さらに、言葉を重視して図や表を取り入れて話し合い活動を行って意見を関わらせていくことで、ものの燃え方についての考えが深まっていった。

5.小・中学校で受けた理科の授業に対する意識及び意識の背景
―学校教員養成課程の学生を対象として―

山口大学教育学部理科教育講座 佐伯 英人

山口大学教育学部学校教員養成課程の学生を対象として、小・中学校で受けた理科の授業に対する意識及び意識の背景について質問紙法による調査を行った。
統計学を用いて分析した結果、次の①と②のことが明らかになった。
① 「理科の授業に対する意識」の変化の仕方に性(男性,女性)による違いがみられなかった。しかし、男性と女性の得点間に有意な差がみられた。また、小学校と中学校の得点間に有意な差がみられた。
② 「理科の授業に対する意識」の変化の仕方に学生の所属(理科教育選修,非理科教育選修)による違いがみられた。
さらに、KJ法を用いて分析した結果、小学校の理科の授業において良好な意識をもたらした5つのカテゴリーが見出された。また、中学校の理科の授業において良好でない意識をもたらした6つのカテゴリーが見出された。

平成18年度 日本初等理科教育研究会 研究紀要(NO.82)

1.実感の伴った理解を図る授業の工夫
~体感を新たな情報に意味づけることの効果~

草加市立長栄小学校 土居 琢磨

 最近の児童は日常生活の中で、自然の事物・現象を十分に体感していない。そのため、自然の事物・現象を問題解決する際に児童全員が仮説を立てて取り組むことが難しい。そこで、単元の導入で自然の事物・現象を十分に体感できる工夫をすることによって、共通の経験をもとに仮説を立て、問題解決をさせることができた。
 一方、体感は個人それぞれの尺度なので、客観性がなく、全ての児童が実感の伴った理解をすることができない場合もある。そのため、体感のみで問題解決するのでなく、客観性のある共通の尺度を用いて問題解決をすることが大切であると考えた。数値を数えることにより、問題解決をしたため、児童はそのちがいを明確に比べることができた。以下、その具体的な実践を記述する。

2.カイコを教材とした実践が児童の心情・意識に及ぼす影響
―第3学年「こん虫をそだてよう」において―

愛媛大学教育学部附属小学校 佐伯 英人

第3学年の理科で「こん虫をそだてよう」を学習する。本研究はカイコを教材とした実践が「児童の心情・意識にどのような影響を及ぼしているのか。」を明らかにすることを目的として実施した。調査対象を第3学年の児童118名とし、調査方法には質問紙法を用いた。分析方法には因子分析・分散分析を用いた。その結果、「生命尊重・生物愛護」と「学習意欲・学習理解」の二つの因子が抽出され、それらが大きく変容したのは1令幼虫期と2令幼虫期の間であったことが分かった。変容させた要因としては、生きものの形態と飼育の方法の二つが考えられる。また、飼育し、観察する学習を行う中で、生きものの形態が変化しても二つの因子の得点が低下しなくなった。このことは、児童の生きものに対する見方がかわったことを意味しており、飼育し、観察する学習の大切さを示唆したものといえる。

3.小学校理科における問題解決の資質や能力からの学習スタイル改善を促す方略
-問題解決的な学習の思考プロセスの導入-

山形大学附属小学校 馬場 賢

 近年,子どもの学習意欲の低下が言われている。これは,子ども自身が学習の意義や価値を見出せていないことが大きく関係していると考えられる。そこで,本研究では,理科における望ましい学習スタイルを,「自己決定した目標を追究する中で,様々な苦労を乗り越える過程を通して問題解決の資質や能力を身につけていくこと,さらに,自己評価や他者の評価などから自分の能力を自覚することで理科学習への自信をもち,理科学習そのものに楽しさを見出していること」ととらえ,こうした学習スタイルへの改善を目指し,問題解決的な学習の思考プロセスを導入し,授業実践を行った。その結果,問題解決的な学習の思考プロセスに価値や意義を見出し,理科学習への自信を高める子どもの姿を見出すことができた。それだけに,学習スタイル改善を促す方略として,問題解決的な学習の思考プロセスの導入の有効性が明らかになった。

4.実感を伴った理解を深め、科学的なものの見方や考え方を育てる理科学習

北九州市立竹末小学校  野村 永

 主題達成のための研究の柱として、
① 五感を通して体感できる教材との出会いと追究の場を保障する。
② 学んだことを振り返る場を保障する。
を設定した。
 さらに、具体的な手立てとしては、「学習過程の工夫」「教材開発」「ものづくり」の3点に絞り、研究を進めた。
 4年生「とじこめた空気や水をおしてみよう」「温度を変えて、かさの変化を調べよう」「ものの温まり方を調べよう」の3単元の実践を通して、常に空気と水、空気・水・金属を比較する学習を仕組むことによって、事象の変化と要因を関係づけた考え方ができるようにすることを重視した学習展開を図った。

5.自ら進んで問題の解決に取り組む子どもの育成
-自然との出会いの工夫と子どもの思考に沿った単元構成の工夫-

豊田市立山之手小学校 寺田育代

 この研究は,てこのもつ規則性に学習の中で無理なく気付くことができるように,導入での事象との出会わせ方を工夫した。身近なおもちゃの中から見つけた疑問を問題化し,追究を行った。体験活動の場を設定することで,新たな発見や問題を見つけることができ,子どもの追究意欲をさらに高めることができると考えた。追究場面において児童の思考を大切にし,小グループとクラス全体での2段階の情報交換の場を設定した。
 児童たちは,問題を解決するために,意欲的に実験に取り組む姿が見られ,「分かる喜び」を実感することができた。

6.科学的に探究し,根拠をもって科学的なきまりを説明できる子どもの育成
- サイエンスストーリーを意識した科学的な探究活動の工夫 -

伊万里市立立花小学校 坂井 文明

 立花小学校では,理科・算数科を中心に「根拠をもってきまりを説明できる子どもの育成」をめざし,平成16年度より研究に取り組んでいる。本研究では,問題を見いだし,見いだした問題を計画的に追究できるよう,科学者たちが歩んだ道のり(探究のプロセス=サイエンスストーリー)を意識させた。また,発見した自分なりのきまりを「実証性=いろいろな方法で調べても同じことが言える。専門的な立場の人に聞いても同じことが言える。」「再現性=同じ方法で繰り返しやっても同じことが言える。」「客観性=何人かの友達に聞いても同じことが言える。」の観点で見つめさせ,根拠をもって科学的なきまりを説明できるよう工夫した。その結果,日常の生活において科学的な見方・考え方で事物・現象を見る児童が増え,理科の学習の中でも,一連の科学的探究活動を意識した取り組みができるようになった。

7.確かな学力を育成する理科指導法の工夫
~自分の体のつくりと働きについて感じ・考え・実感できる指導の工夫を通して~

青森県十和田市立南小学校 上原子 孝始

 本研究は,自然を愛する心情や問題解決の能力,科学的な見方や考え方を高め,理科における「確かな学力」を育成する指導法について検証したものである。「人や動物の体」を単元として取り上げ,自分の体のつくりと働きについて,感じ,考え,実感できる指導の工夫をした結果,自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する能力や,科学的な見方や考え方を高め,理科における「確かな学力」を育成することができた。

8.理科と総合の関連を重視した扱いについての一考察
―第6学年理科「大地のつくりと変化」と総合「ザ・地すべり大研究」との並列的な扱いから―

氷見市立明和小学校  有島 智美
富山大学     松本 謙一

教科と総合的な学習の時間を関連づけた学習を展開することで、それぞれのねらいに一層効果的に迫ることができると考えた。そして、関連のさせ方について、第6学年理科「大地のつくりと変化」と総合のテーマを「ザ・地すべり大研究」との同時期に2単元並列型で行った実践から考察を試みた。
 その結果、理科・総合を2単元として意識して扱った教師に対して、総合中心の単元「ザ・地すべり大研究」一つのみとして意識した追究を展開していた子どもが大部分を占めていたことが明らかになった。
 このことから、地域に密着した題材を扱うときには、2単元並列型ではなく、地域に密着した内容を中核に据え、理科・総合を一体型として扱う。そして、意図的に理科の内容を投入することで理科の内容を網羅していく方が、子どもの意識に沿った追究が保障できると考えられる。

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